ケネディ国際空港でタクシーに乗った男女が失踪。やがて男の方が生き埋め死体として発見される。警察は捜査をかつての科学捜査官リンカーン・ライムに依頼。彼は事故で四肢麻痺になっており、ベッドから動けないのだが…
デンゼル・ワシントン主演で映画化もされた、ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズ第1作目。
池田真紀子 訳
出版社:文藝春秋(文春文庫)
読んでいて、普通におもしろいと思える作品だ。
とにかく次々と起こる事件、うねりのあるプロットがすばらしい。ジェットコースター・サスペンスと銘打つだけあって、襲い来るエピソードの豊富さにただただ感嘆するばかりである。加えてそのプロットも羅列されているだけでなく、綿密に伏線を張って進められている。
よくもまあ、こんなにも読者サービスを意識した作品が書けるものだと、驚き、サクサク読み進むことができた。
この作品が良いのはプロットだけではない。
特筆すべきはその緻密な科学捜査の描写である。その専門性が作品にリアリティを与えていて、豊かな世界観をつむぎ出している。
それに安楽椅子探偵リンカーン・ライムとアメリア・サックスのやりとりも悪くはない。特にアメリアが過去のトラウマを語るシーンは個人的に好きだ。
しかしこの作品、幾分が納得いかない面があり不満も残る。
たとえば、ライムとアメリアの最初の方に出てきた設定が、後半でなかったことにされるシーンがある。たいした設定ではないから、気にする必要もないだろうけれど、扱いとしては中途半端で、読んでいて興醒めな部分があった。
それにライムの推理も強引な面がある。個人的には家畜収容所という結論に至るあたりや、サックス救出の結論の出し方はかなり引っかかった。そして最大の引っかかりは、犯人の動機である。多くは語らないが、僕にはおかしいとしか思えなかった。
初期設定の撤回といい、元々は連載作品だったのだろうか? だとしても本にまとめるときは、もう少し工夫してほしかったと思う。
ってなわけでつっこみどころはたんまりとあるけれど、娯楽としては一級品であることを認めるのにやぶさかではない。言うなれば、楽しいB級映画といったところだろう。
評価:★★★★(満点は★★★★★)
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